先日、YGGオーナーズクラブとしては初となるトレーニングセール購入馬の募集が発表されました。しかも「OBSトレーニングセールで馬買ったやで」→数日後「1歳1次募集のラインナップ発表するで」→さらに数日後「JRAブリーズアップセールでも馬買ったやで」という怒涛の展開。我々会員はてんやわんやに(^_^;)

まあ、私としてはサボってたブログへちょうどいいネタを提供していただいたなと……。今年は1歳1次募集の開始も早いようですが、まずは日米トレーニングセールで仕入れた2歳馬2頭の配合レビューをまとめましたので、ご一読くだされば幸いです。





Voodoo Economics2023(牝)
父:Practical Joke
厩舎:吉村圭司(栗東)
募集総額:1440万円


母Voodoo Economicsは未出走のようですが、半兄Reinvestment Riskはダート7~8FのG1を2着4回という実績。父Practical Jokeは北米リーディングサイアーInto Mischiefの後継種牡馬で、現役時代は7~8FのG1を3勝、母の父Strong Mandateも米ホープフルS(ダート7F)の勝ち馬ですから、マイラー血統を凝縮させた感じの構成。

本馬のポイントは、まずこのStrong Mandate(Tiznow×Deputy Minister)をPractical Joke、ひいてはInto Mischiefに合わせた点。Into Mischiefは牝祖PatelinがEight Thirty≒War Relic3×3・4など強力な父母相似配合で、このPatelinを祖とする種牡馬はナダルにせよアイルハヴアナザーにせよ、いずれもこのEight Thirty≒War Relicを生かした配合で成功。

Patelin 001

Eight Thirty 001

War Relic 001


メルキオル 001

ウインマーベル 001

そしてPractical Jokeも、海外での代表産駒はこのニアリークロスを継続させた配合となってます。本馬の場合、Tiznowは父系のIn RealityがWar Relic3×3、Deputy Ministerは牝祖Good ExampleがWar RelicやEight Thirtyとニアリーと、上記に則った配合ですね(Voodoo Economicsの母方の奥にもEight Thirtyが存在)。

Richi 001
↑アルベルトSマグナスコ大賞(チリG1)など

Good Example 001


もう一つポイントを挙げるなら、やはり“Pretty Polly=Miranda”の増幅でしょう。Into Mischiefが持つHonest Pleasureと、本馬が母方に持つSharpen UpやCandy Girl(Candy Rideの母)を通じて、Stafaralla=Sind(母の母Miranda)を多重にクロスさせたのが面白いところ。

Honest Pleasure 001

Sharpen Up 001

Candy Girl 001

このHonest Pleasureという血はキタサンブラック(ジャパンCほか)も持っていまして、キタサンブラックの場合はBustedやWordenを通じてPretty Polly=Mirandaを増幅。さらにそのキタサンブラックに、トニービンやLe Fabuleuxを合わせて更にマシマシにしたのがイクイノックス(ジャパンCほか)と、この血が大舞台で輝くために不可欠であることは理解していただけるかと。

キタサンブラック 001


最初に触れたようにマイラー×マイラーみたいな形になっているところや、父も母も自身も濃いクロスを持たない点は、配合論の考え方に基づくとマイナスではありますが、細かいポイントは押さえた配合になっていると思います。芝ダート兼用の俊敏マイラーで、ダートなら軽い馬場がベター。





ティノ2023(牡)
父:アルアイン
厩舎:伊坂重信(美浦)
募集総額:960万円


母ティノは未勝利で引退も、Attica(Sir Ivorの母)を祖とする牝系からはエアジハード(安田記念など)やシャダイアイバー(優駿牝馬)などが出ています。父アルアインは現役時代に皐月賞と大阪杯を勝ったディープインパクト系種牡馬で、全弟にシャフリヤール(日本ダービー)、その母ドバイマジェスティは米BCフィリー&メアスプリント勝ち馬。

本馬は、サンデーサイレンスやLyphard、His Majestyなどをクロスする父母相似配合になっているのですが、中でもドバイマジェスティとプレイメイト(Woodmanの母)を通じて“War AdmiralとLa Troienne”の組み合わせでできた血を多重クロスさせているのがポイント。

Buckpasserの母Busandaがその代表例ですが、要はアメリカンなパワーがオンになりやすい血の組み合わせ。ドバイマジェスティはこの“War AdmiralとLa Troienne”パワーで短距離を走ったし、息子のアルアインもこのパワーを受けた体質なので中山や阪神内回りに強かった(シャフリヤールは父ディープインパクト寄りの体質)。

My Charmer 001
↑ドバイマジェスティの4代父Seattle Slewの母

Great Above 001
↑ドバイマジェスティの母の父

プレイメイト 001


それに加えて、Voodoo Economics2023のところでも触れた“War Relic≒Eight Thirty”も累進している(Great AboveのWar Relicと、フジキセキのEight Thirty≒War Relic)ので、かなりパワーに振った配合ですね。父親がディープインパクト系ではあるもののダート向きの短距離馬という印象。


ただ、アルアインのような「Storm Catを持たないディープインパクト系種牡馬」は、母方にStorm Catを持ってくるか、Sir Ivorをいじる配合が成功するというのがありまして。ディープインパクトとStorm CatのニックスはSir Ivor≒Terlingua(Storm Catの母)が根拠で、すなわちディープインパクト系種牡馬はSir Ivorをいじるのが正義なのです。

一応アルアイン自身Sir Ivor≒Weekend Surprise(A.P. Indyの母)ではありますが、それでもコスモキュランダのようにHaloをクロスさせたり、クールベイビーのようにSecrettameを合わせてSir ivorをいじる配合が成功。本馬は上で書いたように牝祖がAttica、つまりSir Ivorの母の血を薄くクロスしているものの、これをもってSir Ivorをいじると言っていいのかどうなのか……。